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2019上黒丸 北山 鯨組 2019:北山ボラ待ち櫓で米作り

ポートフォリオ


北山ボラ待ち櫓で米作り

旧北山分校前の棚田再生は、昔の風景が新たによみがえる空間芸術の実践です。今年の餅米作りは、水守役のじいちゃん、北山ガールズの田の草取り、電気柵張りのおじさん達、北山集落はじめ、みなさんの手入れのおかげで、イノシシにも荒らされず、晴天・豊作の稲刈りでした。稲穂の櫓が、あっという間に積み上がる大収穫でした。おなじみの大漁旗をはためかせ、祝祭の空間ができあがりました。「祝~い♪ 愛で田~や黄金のお餅~♪なるなり~♪いいじ~♪北山~♪」と歌いたくなるような気持ちの良い豊年満作の餅米作りでした。
感謝感激、上黒丸・北山のみなさまのおかげです。また、餅つき・餅まきができる日を楽しみに、伺わせてください。

2019年9月

「鯨談義」つづき・・・米が海へ鰯が山へ

美術評論家の福住廉さんは、「奥能国際芸術祭2017」図録の総評「理想を生きる芸術」のなかで、評論家・中原祐介氏が使った「可換性」― 数学用語を例えた表現として、作家と鑑賞者がそれぞれ入れ替え可能なところに芸術本来の本質がある― と評した表現をさらに哲学者・鶴見俊介の「限界芸術」と重ねて作品「鯨談義」をとりあげてくれました。「鯨談義」の作品空間として北山集落の方々が設えてくれた「ヨバレ」(宴席)の空間では、全ての参加者が各人の能力(知識・技術)を惜しみなく提供する自由で創造性豊かな社交空間が形作られていきました。福住さんは、北山集落の長老達の社交術に驚いていたようです。
そして今も、「鯨談義」から始まった里海と里山を生きる創造性豊かな人たちの交流が続いています。今日も、大量の鰯が山里に届けられました。鯨も水揚げする矢波の網元さんからです。晩秋に作品の田圃で収穫した里山の新米を届けたものが、また海の幸となって回ってきたような出来事です。今年もまた田植えに伺います。昨年から上黒丸・北山集落のみなさんと一緒に米作りをしています。
福住さんの「理想を生きる芸術」が、― 理想は到達すべき目標として私たちの先にあるのではありません。それは私たちとともに生きることができるのです。やや大げさに言えば、今回の「奥能登」は理想郷としての芸術祭だったのかもしれません。だとすれば、問題は今後、私たちはそれをどのようにして生きることができるのかという点にあります。(中略)今も昔も、そのためにこそ「芸術」は存在しているからです。―それが、北山集落で実践されているのかどうか、僕にはわかりません。それでも、今朝の電話で、鯨捕りの師匠から「鰯まんでとれたさけ~ぇ北山へ持っていくわいね~ぇ」と知らせてもらえました。里海里山で交流する僕の師匠達が、自由で創造性豊かな社交術を展開し、今日も限界集落で「限界芸術」を実践していることが、僕の好きな場所で起こっている何よりも嬉しい出来事です。

(2019/04:能登町矢波大敷網元・鯨師匠・辻口重明秋氏からの電話より思う)

引用・参考文献)奥能登国際芸術祭2017(図録)
北川フラム (監修)
奥能登国際芸術祭実行委員会
出版社 ‏: ‎現代企画室
総評「理想を生きる芸術」福住廉

出典(『形の文化研究』 12, 2018, pp.67-72.)

[This work was supported by JSPS KAKENHI Grant Number JP17K02345.]
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